第四の壁 演劇交流会



カテゴリ:[ なんでもフリートーク ]


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[23] コクトーの「声」 2

投稿者: 亜門啓太 投稿日:2014年10月 3日(金)00時57分3秒 p3095-ipbf1202sapodori.hokkaido.ocn.ne.jp  通報   返信・引用

『声』がひとり芝居として成功したかどうかを明らかにするのは主人公の苦悩する女の意識の流れをいかに再現できるかにかかっている。最初は待ちわびた電話の混線から話が始まるが、これは単にコクトーがこれを書いた時代の通信状況を表しているだけでなく明らかな作家的意図が働いていることを見逃してはならない。それはこの戯曲全体を通してほとばしっている女の意識の混乱、神経の絶え間ない怯えからきているということだ。『社会が邪魔をする』というセリフにも象徴されているように女の運命に容赦なく入り込んでくる様々な雑音、妨げ、誹謗、冷たい視線、裏切り、それらすべてが協力なノイーズになって彼女をとりまくのである。世界中のどこにでもいる普遍的な女は我々ひとりひとりの具現であり、その苦悩は人間に共通するものなのだ。堀の演技にはそれを再現しようとする明確な意図が一貫して貫かれており、この作品への思い入れと読みの深さを感じさせるに十分だった。ここに観るものを真に感動させ得る芝居の極意が隠れている。役者は動作や表情、セリフを自分のものにするとき、最も肝心なのは演じる対象の心の襞に分け入り、絶えず漂い変化する意識の流れをいかに舞台の上に表出するかにかかっている。その点から見ても堀の芝居は見事な成功をおさめたと言えるのである。20年ほど前に演じたことがある堀は、おそらくコクトーの描き出した苦悩する女を自ら体験し、惑い、苦しみ、死線をさ迷う想いも経験してきたのではないかと私は想像する。その見えざる人間の命の脈動がひしひしと伝わってくる今回の舞台は間違いなく彼女の生涯の代表作になり得るものと私は確信する。


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